2008年2月20日水曜日

捨てられない


 2年と少し前、今のアパートに引越してきたときに、実家にあったエリックの荷物を全て移しました。家具など大きいものはほんの数点で、あとは本・小物や衣類でした。エリックは、はっきり言って「捨てられない」性格です。ひとつひとつの品物に思い出があることは、よく分かります。でも、必死で運んだ箱の中から、どうしようもないような物―古い洋服・カセットテープ・半分壊れた電化製品等―が出てくるたび、私は残酷な気持ちがこみ上げてくるのを抑えられませんでした。そして、宣言したのです。「このアパートを出るときには、不要なものは運ばないから!」
 かつては私自身も「捨てられない」性格でしたが、渡米した際やむを得ず色んなものをあきらめました。その少し前には空き巣の被害に遭い、自分が大切にしていたものをほとんど盗られてしまった経験もあります。これがトラウマ(心の傷)となって影響しているのか、物に対して少しドライになったかもしれません。今回の引越は、着々と準備がすすんでいます。古い物の大半は、見切りをつけて処分したり、寄付品を安価で販売する店に持っていったりしました。買物を我慢してきた甲斐もあり、思っていたほど大荷物でなくて済みそうです。
 ふと手を止めて考えます。「物を少なく雑念を少なく、すっきり暮らしたい。」でも、逆に「思いの込められたものに囲まれて、心豊かに暮らせたら…。」そうドライにならないで、古い物は大事に取っておけばいいし、欲しいものは手に入れていけばいい、とも考えられる…。いけない、いけない。こんな考えにひたっていては、荷造りがはかどりません。

写真:アパートのすぐ向かいにあるRichardson Towers。この見慣れた景色とも、もうすぐお別れです。