2009年11月22日日曜日

アラーム

 私は田舎育ちのせいか、都会の騒音が苦になることがあります。この家はレストランのある商店街に近く、週末など夜遅くまで外を行き交う人たちの声が聞こえるので、寝るときには耳栓を使っています。パトカーや救急車や消防車の音も、いつもどこかで響いています。

 渡米して間もない頃、こんな経験がありました。入籍前の当時も、エリックと共に実家に同居させてもらっていました。ある午後、義父母とエリックはそれぞれに外出し、私は一人で留守番でした。そんなときは昼寝が一番です。慣れない生活で疲れていたためか、ぐっすり2時間ほど眠りました。
 目が覚めて、トイレに行こうと寝室のドアを開けた途端、ものすごい大音量でアラームが鳴り響きました。止めたくても止め方がわからず、両手で耳をふさいでおろおろ。おそらく1、2分のことだったと思いますが、長時間の拷問のように感じました。鳴り止んでからも、しばらくは放心状態で、トイレのことなどすっかり忘れてしまいました。
 脈が落ち着いてから1階に行くと、裏庭に黒い人影が見えました。手には拳銃らしきもの。「口から心臓が飛び出さんばかりに驚く」とは、まさにこの状態です。足音をしのばせ家の奥に隠れると、今度は玄関にノックの音が。手に汗にぎり、ガラス戸の向こうに見える人影をもう一度こっそり見てみると、なんと制服姿の警官でした。
 ドアを開けると、男女の警官が立っていました。黒人の男性が周りの様子を伺い、白人の女性が私に話しかけました。
「通報が入ったんだけど、あなた大丈夫?」
「はい、大丈夫です。すみません、アラームの解除の仕方が分からなくて。まだアメリカに来たばかりで、ここはフィアンセの実家なんです。」
「家の中の様子を見せてもらうわね。」
そう言って、宅内の無事を確認し、帰っていきました。
 どうやら、私の居ることに慣れていなかった義父が、出かけるときに防犯アラームをセットしてしまったようです。留守モードのセンサーが、寝起きの私の体温を検知したわけです。夜になって帰宅したエリックにこの出来事を話すと、珍しく義父の失敗を責めていました。

 今日は日曜日で、私は朝10時過ぎまで寝ていました。義父母は早く起きて教会に行ったそうです。出かけるときに義父がまたアラームをセットしそうになったという話を聞いて、何年か前のこの経験を思い出しました。