2009年8月6日木曜日

戦争


 戦争を経験していない私にとって、空襲や捕虜や原爆という言葉は恐ろしく響いても、なかなか実感として分からないところがありました。衝撃を受けたのは、広島の平和記念資料館と沖縄のひめゆりの塔。真っ黒に焦げた弁当箱や壊れたメガネなどの展示物は、被爆者たちがその日までそれぞれに生きていた証です。資料を見ているうちに涙がこみ上げ、人前にも関わらず号泣してしまった記憶があります。
 バッファロー郊外の老人ホームで働いていた頃、私を可愛がってくれる老紳士がいました。ある日、勤務を終えてから部屋を訪ねると、若い頃の写真を見せてくれました。その中に軍服姿の一枚がありました。「何十年か前には、あんたの国と戦っていたんだよ。」老紳士は穏やかな口調でそう言いました。
 今、私はアメリカ人と結婚しているし、知っている限りでは日米関係も良好で、普段は戦争があったことなど忘れてしまいます。でも、時折―特にこの時期に―過去を振り返るのは大切なことだと思います。歴史から学び、同じ過ちを繰り返さないことが両国戦没者への一番の供養になると思うから。