2007年10月7日日曜日

おすそ分け



 私の職場である歴史博物館は、普段は静かな場所ですが、週末には、意外なイベントがここで開かれます。それは、なんと結婚式!気候の良いときだけということですが、私が勤め始めた8月から現在に至るまでの期間は、土曜日には毎週結婚式がありました。博物館の地下には、密かに業務用キッチンがあり、午後3時頃からケイタリングのレストランのスタッフが、準備を始めます。5時に閉館。6時からホール又はバルコニーに都度特設する小さな祭壇で式を挙げ、一旦参列者に退席してもらい、7時から披露宴。生バンドの奏でる賑やかな音楽に合わせて、新しく夫婦となったカップルは、家族や友達と食事やダンスを楽しみ、パーティーは深夜まで続きます。
 博物館の結婚式は、教会で挙げる厳かな式とは、少し雰囲気が異なります。それほど大きなホールではないので、集まった人たちが、すぐ近くで花嫁花婿の誓いの言葉を聞くことができます。また、地域の歴史を紹介するパネルや展示物が回りにあるため、本人たちや家族にとっては「馴染みの場所」で挙式できる喜びがあり、参列者は、多少の待ち時間も退屈しなくて良いようです。久しぶりにバッファローを訪れる親戚の人などは、ギフトショップでお土産の買物もされます。博物館のスタッフも交代で受付を勤めるので、私もこれまで2度立ち会いました。
 エリックと私が結婚したのは、2年前。今でも、あの日の感動は鮮やかに覚えています。ドレスを着て教会に向かう途中、見知らぬ人たちから「きれい!」と言ってもらい、とても嬉しかったことを思い出し、私も博物館の花嫁さんに声をかけるようにしています。結婚式をそっとのぞかせてもらったときには、つい涙が出てしまいました。パーティーの後で、テーブルを飾っていたバラをいただきました。幸せを少しおすそ分けしていただいたようなその花たちは、その後しばらく、私たちのテーブルでやさしく香っていました。