2007年11月12日月曜日

アンティーク


 1911年生まれのエリックの祖母は、私たちが結婚する少し前に、94歳で亡くなりました。亡くなる2年前、私が初めてアメリカに旅行で訪れたときに、日本の写真を見てもらったり、小さなプレゼントを交換したことは、とても大切な思い出です。彼女の朗らかな性格と少しくすんだブルーの瞳は、義父とエリックが受け継いでいます。
 その祖母の遺したアクセサリーを、私も形見に分けてもらいました。アメリカ国内に限らず、祖父とともに世界を旅行してきた祖母は、各地でお土産と一緒にアクセサリーを購入していたようで、よく見ると、ドイツ製・イギリス製と表示してあったり、スタイルから「これはメキシコ製かな」と想像できるものもあります。祖母の世代の女性は、家に居るときも身なりを整え、アクセサリーを日常的に着けていたようで、夫を敬い女性らしさを忘れないその精神を、見習わなくてはいけません。そういえば、イギリスでボランティアをしていたときに出会ったペギーも―祖母より少し若い世代ですが、今も元気な様子です―いつも髪を整え、指にはマニキュア、耳にはイヤリングを着けていました。これらは、コスチューム・ジュエリーと呼ばれ、貴金属としての価値はありませんが、見映えのする色とデザインは、今でも私たちの目を楽しませてくれます。
 バッファローでの私たちの生活は、アンティークに囲まれた節約生活です。アパートは築60年を超す古い建物、使っている家具も、エリックの祖父母の遺品と実家にあったものの寄せ集めで、何ひとつ新しいものはありません。食器や調理器具も同じで、結婚したときに自分で買ったのは、包丁とまな板だけ。でも、古いものをありがたく使わせてもらって送る今の生活スタイルが、私はとても気に入っています。そして、亡くなった祖母も、こんな私たちを、きっと応援してくれているにちがいないと思うのです。